スパーはジムによって座って始めるところと、立って始めるところがあるらしい。同じジムでも最初からトップとボトムを決めてスパーを始めるところがあるようだ。これらはどうも人口密度的な事情のようだ。比較的スペースを広く使えるところは立ってはじめて、手狭なところは座って、あるいは片方が座って始める。まあ立ち技をどの程度重視するか、という指導者の方針にもよるのだろう。
柔術の練習はもっぱら寝技が主になるけど、試合もスパーも立って始める。
最初にまずまごつくのが、開始直後の展開だ。
そもそもどうしたら良いのか分からない。何をどう掴んだらいいのか、足を使ったら良いのか。先輩の様子をみてもいきなり座ったり、引き込んだり。引き込みにしてもテイクダウンにしてもいろいろあるうえ、それぞれどんな意味があるのか分からない。
その点、やはり「中井祐樹の新バイタル柔術
要は相手を倒すか、自分から下になるか、という2択になるのだと。
言われてみると当たり前のことだけど、こう断言してもらえると頭の中がかなり整理しやるくなる。
で、引き込みはその後の展開とセットになるので、自分が仕掛けようと思っているガードポジションによって、引き込み方も変化する。よって使えるガードポジションが増えれば引き込み方も増えるし、偶発的な引き込みでもそこから手持ちのガードポジションに変化しやすくなる。
ただテイクダウンに関しては、ずいぶん選択の幅が限られる気がする。
なぜなら柔道を子どもの頃からやってました、という例でもない限り腰に背負投系の技は身につかない。練習に長大な年月を要するうえ、おっさんになってから始めた身としては練習中に怪我のリスクも高い。さらに距離を取られたり襟を取られたりすると簡単に封じられてしまうという弱点もある。その割に柔術的には2ポイントにしかならない。ただ開始しょっぱなに2ポイントを奪えるのは点数以上に精神的な効果がでかい。5分なら5分を最初から優位に進められるからだ。また立ち技の練習によって、容易に投げられなくなるという面もある。だから柔術における投げ技のメリット、デメリットを整理するとこんな感じになる。
◯メリット
・最初の2点をとれる可能性が高まる。
・最初の2点によって精神的な優位に立てる。
・投げ技の練習によって、投げ技への耐性が身につく。
◯デメリット
・習得に手間と時間がかかる。
・めっちゃ疲れる。
・練習中に怪我をする可能性が高い。
・2点しか取れない。
・頑張って習得しても簡単に封じられる。
こう比較するとデメリットのほうがでかいのが一目瞭然である。
特に大人になってから柔術を始める場合、時間も体力も限られている。投げ技に使う分の労力を、寝技に費やした方が安全に少ないコストで勝てるようになるはずだ。
そう考えて寝技の練習時間がどんどん増えていく。それは合理的な選択と言える。
ただゲーム理論を導入するとちょっと事情が変わってくる。
大多数が合理的な選択をするのなら、その大多数の裏をかく戦略が効果的ということになる。7割の人がパーを出してくると分かってるなら、チョキを出す練習をしておけば7割の確率で勝てる。そういう発想だ。
その意味ではやはり立ち技を強化した方がいい。
でも背負い投げなど柔道ライクな投げ技は難易度が高いわりに効果が低いため、自然とレスリング式のタックルが有効なことになる。吉田沙保里ばりの無拍子タックルは無理だとしても、そこそこタックルっぽい攻撃ならちょっと練習すれば誰でもできるようになる。これをカードとして持っているだけも、立ち技からの選択肢が大きく広がる。なぜならテイクダウンという大きなカードが手に入るからだ。
「中井祐樹の新バイタル柔術
すると相手は4倍、展開を読みにくくなる。つまり4倍優位にゲームの序盤を制することができる。
かなりざっくりとした計算だけど、立ち技で「テイクダウン」と「引き込み」の両方を持っておいた方がいいのは間違いない。
投げ技をのぞいてもテイクダウンにはいろいろとある。
タックルもいいし、アームドラッグやダッグアンダーでバックをとっても良い。または踵をとってアンクルピックでも良い。あと忘れてはいけないのは、必ずしも倒す必要はない、ということ。IBJJFルールでは相手が四つん這いの体勢になればボトムになったとみなされる。相手の奥襟を掴んで引き倒し、パーテルポジションで固定したままキープすれば、それでテイクダウンの2点が入る。
そう考えると投げ技抜きでもいろいろできることはある。いろいろスパーで試して、なんだかしっくり来るものを磨き上げよう。
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